病原となる微生物

大腸菌O157

家畜の腸内に生息し、強烈な毒素を作る。
感染すると下痢から腎機能の低下で死に至ることも。

大腸菌O157は牛や羊の腸の中に生息していることが明らかになっています。

症状
下痢を発症するが、軽度のものから血便をともなうものまである。子どもや老人の場合、発症2~3日後から全く尿が出なくなる「溶血性尿毒症症候群」という腎機能不全状態に陥り、死に至ることもある。

菌の特徴

1980年以降に出現した菌であり、牛、羊、山羊、猫、犬などの消化管に生存しています。大腸菌O157が排出する毒素は、数ある毒素の中でも最も強力な部類に入り、ヒトに感染すると細胞を急激に破壊していきます。

感染経路

大腸菌O157に汚染された加熱の不十分な食肉を食べたり、食肉調理の過程で使用した調理器具を未調理の食材に使用したり、殺菌処理されていない牛乳や汚染された水を飲む、糞尿で汚染された家畜を触った手で食べ物を食べるなど、さまざまな感染経路があります。

対策
食肉は十分に加熱処理し、手、包丁、まな板、皿など肉に触れたものは必ずよく洗浄することで、感染を予防することが出来ます。
【参考文献】
「恐怖の病原体図鑑 ウイルス・細菌・真菌 完全ビジュアルガイド」トニー・ハート著 中込治訳 西村書店
「食中毒学入門 予防のための正しい知識」本田武司著 大阪大学出版会
「保健室で見る 感染症の本 みんなをねらう、危険な敵 ③「食中毒」編」近藤とも子著 国土社
サルモネラ

鶏卵が感染源となることが多く、腹痛、下痢、
嘔吐、発熱を引き起こす。
免疫力が低下していると重症化も。

サルモネラ菌による食中毒は、夏場に増加する傾向にあります。サルモネラ菌の一種である、Salmonella enteritidis(サルモネラ エンテリティディス)は卵の黄身にまで侵入していることがあります。またサルモネラ菌による感染は手作りチョコレート(卵や牛乳を使うため)からも発生した記録があります。

症状
腹痛、下痢、嘔吐、発熱を引き起こす。4~5日で回復に向かうことが多いが、子どもや老人など免疫力が低い患者の場合、菌血症を起こし重症化、ひいては敗血症を併発して死に至ることもある。

菌の特徴

サルモネラ菌は大腸菌と同じグラム陰性菌で、養鶏や養豚が持っていることが多く、生肉や卵をはじめミルクなどまで汚染することがあります。熱や酸に弱いが、乾燥や低温に強いため、冷凍食品から発見されることもあります。

感染経路

汚染された鶏卵や食肉、牛乳の摂取によるものから、糞尿で汚れたペットに触れることによる感染、ヒトとヒトの接触による感染もあります。

対策
鶏卵をしっかり加熱調理する、調理器具の殺菌・消毒の徹底のほか、こまめに手指の洗浄・殺菌をすることです。また、重症化しやすい抵抗力の弱い子どもやお年寄りは、生卵や生肉を食べるのを控えましょう。
【参考文献】
「恐怖の病原体図鑑 ウイルス・細菌・真菌 完全ビジュアルガイド」トニー・ハート著 中込治訳 西村書店
「食中毒学入門 予防のための正しい知識」本田武司著 大阪大学出版会
ノロウイルス

冬に多いノロウイルスの感染性胃腸炎や食中毒。
感染者が触れた器具等は必ず消毒。

ノロウイルスによる感染性胃腸炎や食中毒は、一年を通して発生するものの、特に11月~1月の冬の時期に流行します。食品中に含まれるウイルスを検出することが困難で、感染経路の特定が難しいのが現実です。

症状
吐き気、1日10~15回程度の嘔吐により発症し、腹痛と下痢が起こり、通常5~6日程度で回復に向かう。子どもやお年寄りは重症化することもある。

ウイルスの特徴

ノロウイルスはヒトの腸管で増殖します。食品中に含まれるウイルスを検出することが難しく、感染経路の特定が難しいのが現状です。

感染経路

ヒトの便、咳などによる飛沫、ヒトとヒトとの直接接触により感染します。
*ウイルスの不活化については「厚生労働省」ページをご参照ください。

対策
こまめな手指の洗浄・殺菌が重要です。加熱が必要な食材はしっかり中心部まで加熱し、調理器具は洗浄・消毒を徹底しましょう。汚物を処理する場合にはかならず手袋を使用し、しっかり封をしてから廃棄しましょう。
【参考文献】
「恐怖の病原体図鑑 ウイルス・細菌・真菌 完全ビジュアルガイド」トニー・ハート著 中込治訳 西村書店
わかっちゃう図解 ウイルス」阿部純子著 石川隆監修 新紀元社
アデノウイルス

学校感染症「プール熱」「流行性角結膜炎」を
引き起こすアデノウイルス。症状も多岐にわたる。

「かぜ」の諸症状を引き起こし、これまでに51以上の種類が発見されているアデノウイルス。また呼吸器の感染症、下痢、発疹、結膜炎など様々な症状の原因ともなっています。子どもの感染する病気も多く、夏にプールを介して感染する「プール熱(咽頭結膜熱)」や、目の充血や目やにが出る「流行性角結膜炎」はいずれも学校保健安全法上の学校感染症に該当します。

症状
咽頭結膜熱(プール熱):発熱、のどの痛み、結膜炎、吐き気、頭痛があり、5日ほどで回復に向かう。
流行性角結膜炎:眼の痛み、結膜の浮腫・充血、目やに、涙目、頸部の腫れがあり、回復までには2~3週間かかる。
出血性膀胱炎:頻尿、排尿痛、残尿感、血尿。
感染性胃腸炎:嘔吐、下痢、発熱。

ウイルスの特徴

アデノウイルスは呼吸器、消化管、眼球結膜など様々な組織で増殖します。種類は少ないものの、膀胱や肝臓の中で増殖するもの、膵臓、心臓、中枢神経系に感染症を引き起こすものも。

感染経路

ヒトの便、咳などによる飛沫、直接接触により感染します。夏にはプールの水による感染も多くあります。
*ウイルスの不活化については「国立感染症研究所」ページをご参照ください。

対策
こまめに手指の洗浄・殺菌をすることです。感染者に接触は避け、接触しなくてはならない場合は手袋・マスク・メガネなどによって飛沫感染を防ぎましょう。患者が使用したタオルや器具は洗浄・消毒します。
【参考文献】
「恐怖の病原体図鑑 ウイルス・細菌・真菌 完全ビジュアルガイド」トニー・ハート著 中込治訳 西村書店
「わかっちゃう図解 ウイルス」阿部純子著 石川隆監修 新紀元社
クリプトスポリジウム

殺菌剤にも耐性を持つ原虫。家畜やヒトの消化管でのみ増殖し、下痢症を引き起こす。

「クリプトスポリジウム」は、特に家畜の糞尿を含んだ汚水が流れ出す河川でよく発見されます。大きさは酵母位ですが、細菌や酵母でなく原虫です。成虫が増殖するのは家畜の消化管で糞便と一緒に排泄されそれが河川を汚染します。

症状
下痢が10~14日間続く。中には何か月にもわたることもある。便は水様となり緑がかり嫌なニオイを発する。

原虫の特徴

オーシスト(硬い殻に包まれた卵)とスポロゾイド(分裂成長する原虫)の二つの成長段階があり、体内に取り込まれるとオーシストが破れ、スポロゾイドを放出します。増殖するのはヒトや動物の消化管だけですので、家庭のキッチン環境で増殖することはありません。

感染経路

主に家畜の糞尿などで汚染された河川を浄水した水道水から感染します。そのため浄水場の管理によってかなり感染を防ぐことが出来るといわれています。

対策
この原虫は熱に弱いので、家庭でも熱殺菌できます。また非常時の場合に、水道局より「水を沸かしてから飲んでください。」などの注意がありますが、クリプトスポリジウムの感染予防のためにも必ず煮沸してください。
【参考文献】
「恐怖の病原体図鑑 ウイルス・細菌・真菌 完全ビジュアルガイド」トニー・ハート著 中込治訳 西村書店
「わかっちゃう図解 ウイルス」阿部純子著 石川隆監修 新紀元社
ロタウイルス

乳児の下痢症の原因の多くがロタウイルス。
冬季に流行し、ワクチンでの予防も可能。

乳児の下痢症の原因の多くが、ロタウイルスであると言われています。そのうち10%が重症化し入院となります。また世界中では下痢症により命を落とすのは、開発途上国を中心に毎年約70万人とも200万人とも言われています。ノロウイルスと同じように冬季に流行します。

症状
急激に大量の水様性下痢で発症し、嘔吐が先行することもある。6~7日間で回復に向かうが、くりかえし感染発症することもある。

ウイルスの特徴

「ロタ」はラテン語の「車輪」を意味しており、電子顕微鏡で見ると車輪状になっています。生涯のうちに何度も感染しますが、症状が現れるのは最初の2~3回で、発症しても軽い症状で済むことが多いです。まれですが、重症化することがある感染症です。

感染経路

感染者の下痢や嘔吐物により、ヒトからヒトへ経口感染します。また汚染された水や食物を介して、あるいは汚染された物の表面、例えばドアノブ、手すり等を触った手などからも口に入ります。
*ウイルスの不活化については「横浜市衛生研究所」ページをご参照ください。

対策
こまめな手指の洗浄・殺菌が重要です。汚物を処理する場合にはかならず手袋を使用し、しっかり封をしてから廃棄しましょう。汚染された器具はしっかり洗浄・消毒しましょう。
【参考文献】
「恐怖の病原体図鑑 ウイルス・細菌・真菌 完全ビジュアルガイド」トニー・ハート著 中込治訳 西村書店
「わかっちゃう図解 ウイルス」阿部純子著 石川隆監修 新紀元社
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